2025-06-06

6月6日に思うこと
「6月6日って何の日?」
そう聞かれたら、ぼくは即座にこう答えます。
「ノルマンディー上陸作戦の日」と。
D-Dayとも呼ばれるその日。1944年6月6日、英仏海峡を越えて、連合軍がフランスの海岸に上陸しました。
第二次世界大戦の転換点となった、史上最大の上陸作戦です。
ぼくの旅には、しばしば“テーマ”や“到達点”が存在します。
たとえばアイルランドを旅したときは、アラン諸島を目指しました。
ポルトガルの旅個展に展示した絵は、ユーラシア大陸の最西端・ロカ岬を目指した旅の産物です。
そして実は──。
絵を描いて生きていく、そんな人生を歩む前から、ずっと思いを馳せている場所があります。
それが、「ノルマンディー上陸作戦」で血に染まった、あのオマハビーチです。
スティーブン・スピルバーグ監督の映画『プライベート・ライアン』でも、その上陸シーンが生々しく描かれていました。
「どうしてそんな場所に行きたいの?」と、怪訝に思う人もいると思います。
でも、ぼくにとって「旅」とは、単に風景を追いかけるものではありません。
出発点を定め、意味のある到達点を持つことで、旅の途中において日常とはまったく異なる“考察”が浮かび上がってくるのです。
たとえばフランスの大地に連なる、穏やかな丘、丘、丘。
その谷間を縫うように走るブッシュ。
はるかに見える村に立つ小さな教会…。
その美しさは、息をのむほどです。
けれども、そんな美しい風景の中で、80年前には多くの兵士たちが命を落とした。
その歴史的事実は、静かに、しかし重く存在しています。
いつかぼくが叶えてみたいこと。それは、解放されたパリを起点にした、ノルマンディーの地を目指す旅です。
旅で見た風景と感じた「何か」は、筆をもつ手を通してスケッチブックに染み込んで行く──
そうすることで「歴史と向き合う風景画」が生まれるのではないか、と、漠と思っているのです。
今すぐに叶う旅ではないと思います。
けれどもいつか、必ず。
そんなことを考えていた6月6日でした。
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(映画『プライベートライアン』のぼくのレビュー記事はこちらからご覧いただけます)

1944年のオマハビーチ