2026-03-11

『第5回絵本で学ぶ東日本大震災』で講演
今日は15年目の3.11です。タクがオンラインイベント『第5回絵本で学ぶ東日本大震災』で30分だけですが、「震災とアート」という演題で講演をしました。
カウンセラーとして被災地に関わっていらっしゃる、絵本セラピストの福井みどりさんが主催で行われたイベントです。
タクはこの講演の機会が15年の震災と表現活動の有意義な振り返りになったようです。
以下、タクの講演内容の要約を掲載しておきます。
震災とアート
―画家が15年かけて見つけた「未来の描き方」―
先日、「絵本で学ぶ東日本大震災」というオンラインイベントにゲストとして招かれ、講演を行いました。テーマは「震災とアート」。一人の画家として、東日本大震災とどのように向き合ってきたのかを振り返る時間となりました。
震災当日、私は自宅のアトリエでイラストの仕事を終えたばかりでした。少し横になっていたとき、大きな揺れが襲いました。揺れが収まってアトリエを見ると、部屋はぐしゃぐしゃ。しかし、そのとき個展を四日後に控えており、まず気になったのは「作品は大丈夫だろうか」ということでした。
押し入れを開けてみると、不思議なことに作品だけはきれいに揃って無事でした。
状況を考えれば個展は中止だと思い、画廊に連絡しました。するとマネージャーから「こんな時だからこそギャラリーを開けましょう」という言葉が返ってきました。作品は三陸の風景を描いたもの。津波で失われた場所の絵です。正直、開催することに迷いもありました。しかし、震災で疲れた人が少しでも心を休められる場になるなら意味があるのではないかと思い、開催。
結果として、その個展は一ヶ月のロングランになりました。多くの人が訪れましたが、来場者の多くは絵を見るというよりは、むしろ、自分の震災体験を語りに来ました。私はその話をひたすら聞くことになり、まるで心理カウンセラーのような日々だったのです。
振り返ると、この時期は「生き抜く」段階だったと思います。
震災の翌年からは、「求められることをする」時期に入りました。三陸の失われた風景を描き続け、震災関連の展示や企画に参加しました。しかし数年続けるうちに、襲ってきたのは心の疲弊です。失われた風景と向き合うことは、美しいものを描くこととは違う重さがあったのです。
2018年、私は一度立ち止まることにしました。震災というテーマから少し離れ、「海」という存在そのものに向き合う展示「海画展」を開催しました。三か月に渡り、7つの会場で海を文学や旅、船などのテーマで描いた展示でした。この展示を通して、私はようやく未来を見る気持ちを取り戻しました。
その後、大川小学校震災伝承館の仕事に関わることになります。津波で写真や資料がほとんど残っていない地域の風景を、地元の人たちの記憶を聞きながら描く仕事でした。また、震災時に活動した保健師の記録を絵にする仕事や、NHKの番組で市民の震災体験の体験談を読んで描く仕事などにも関わりました。そこでは私は名前の出ない「黒子」として仕事をしていました。
そして2021年頃から、私の中で新しい段階が始まりました。それは「未来を見る」段階です。
震災を経験した画家として、水害など他の災害をテーマにした絵本制作の依頼が来るようになりました。震災から10年を経て、アートの役割が「震災を伝えること」から「未来へ問いかけること」へと変わってきたように感じています。
振り返れば、この15年には苦しいことも多くありました。しかしそのすべてが、今の表現へとつながっているようにも思えます。
震災という暗い体験を通してきたからこそ、私は今、より強く「光」を描きたいと思うのです。
(2026/3/11 古山拓)
下の絵は、「大川小学校の春」です。





