• facebook
  • instagram
  • twitter
  • note
  • tumblr

メルカート旅絵/絵とエッセイ

メルカート旅絵/絵とエッセイ

水彩画と文を担当している旅エッセイが掲載された「メルカート」が手元に届きました。裏表紙のエッセイを担当しています。

今回は正岡子規が歩いた秋田を取り上げています。(ちなみに拙著「子規と歩いた宮城」は当サイトのショップで通販可能です)

以下、エッセイをアップします。

+ + +

秋田・大須郷  
 「夕 陽 に 馬 洗 ひ け り 秋 の 海」 正岡子規
 
これは、山形県吹浦で日本海に落ちる夕陽を詠んだ、正岡子規の句だ。明治二十六年、子規は上野から鉄道で東北入りし、著作「はて知らずの記」に多くの俳句と当時の様子を残している。


以前「旅絵10」でイザベラバードの辿った山形県飯豊を取り上げたが、私の絵の風景モチーフを探す方法の一つが、紀行文に書かれた道を辿るという手法だ。それは書き手の思いの追体験といってもいい。


宮城県から山形県に徒歩で入った子規は、大石田から最上川を舟で下り、清川で上陸する。酒田、荒瀬、遊佐と羽州浜街道を歩いて北上、吹浦で冒頭の句を詠んだ。


吹浦の海岸で陽が沈み、子規が宿を求めたのが、秋田県に入ってすぐの大須郷だった。「はて知らずの記」には、「行き暮れて大須郷に宿る」とある。


今まで私も日本海に沿ったルートを何度も旅してきた。しかし、子規の紀行文を読んでいなかったならば、大須郷は立ち寄ることさえなかったように思う。


家並みは変わったかもしれないが、子規が感じた風の中に自分が立っている。そう思うだけで、大須郷の素朴な田園は心に迫る風景となった。

+ + +

イザベラバードの回は「illustration」に掲載しています。お時間ありましたらどうぞ→。https://www.artio.jp/gallery2/4935